MURDER for Twoのこと その2

最初はこれ。

『そんなバナナみたいなバカなキョウキ』

この本のタイトルはストーリーの中でも重要な役割を持っているのに、初めて観たときにどうしても理解できなくて、スクリプトで一番最初に確認したいと思ったフレーズです。
まずは「キョウキ」という言葉。
最初聞いたときは「凶器」だと思ってました。
でもそれでは話が合わない。
アーサー・ホイットニーの作品のタイトルはすべて、作品に登場する人物を表しています。
『未解決の人々』、『やかましい中年カップル』、『愛想のいい年寄りの精神科医は無実だ』、『質問しすぎのわが姪っ子は間抜けな大学院生』など。(今こうしてタイトルを書いているだけでも笑っちゃう)
話が進むにつれて『そんな~』はドクター・グリフについて書かれた本だということがわかります。
でもこのタイトルがどうしてもドクター・グリフと結びつかない。
他のタイトルはどストレートなのに、これだけなぜこんな遠回しな表現なのか。
どういうこと???
ここでついにスクリプトの登場です。
大阪公演を観た帰りの新幹線の中で初めて開きます。
そして衝撃の事実。
このタイトル、オリジナルの英語は、

"All of Them Bananas!"

でした。
そのまま訳したら『やつらみんなバナナ』
そこで思い出したのが、ドクター・グリフがマーカスに言った言葉。

「君もみんなと同じだ。あいつもバナナ、こいつもバナナ、みんな頭がおかしい」(たしかこんな感じ)

オリジナルはこのセリフそのままだったのか!
そして辞書を引いてみます。
bananaはもちろん果物のバナナ。
でもbananasにすると、crazyと同じ意味だと判明。
bananas!って言うと「ばか言え!」ってニュアンスなんですって。
まさに「そんなバナナ!」

キョウキは「凶器」じゃなくて「狂気」だったんですね。
ちなみに、他の本のタイトルの英語は次の通り。

"Unsolved Hearts"
"The Feisty Old Couple"
"The Friendly Old Psychiatrist is Innocent"
"My Niece is a Dumb Grad Student Who Asks Too Many Questions"

他はほぼそのまま訳しているのに、なぜ"All of Them Bananas!"だけこねくり回した日本語にしたんだろう。
正直、ちょっぴりわかりにくかったです。
唐突にバナナがでてきたし、そのままだとバナナ=おかしなやつ、が伝わらないからかな。
でもキョウキという言葉でかえって混乱した人が多かったんじゃないかな。
いや、それともあえてのキョウキでダブルミーニングにしたかったのかな。
クレイジーな人々は凶器になりうる、とか?(ドクター・グリフはいつもみんなの話を聞くだけで、自分の話は誰にも聞いてもらえなかったから)
などと勝手に思いをめぐらせています。
とても楽しいです。

バナナの意味がわかると、だから少年合唱団の合言葉もそれなのね、ってなりました(笑)