MURDER for Twoのこと おわり

最後はこの二人。

★坂本くんと松尾さん

坂本くんにはこの作品で、持っている技術をこれでもかと見せつけられた気がします。
七変化どころじゃない十変化は本当に素晴らしかった。
一瞬でちゃんと別の人に変わっている、その切り替えがすごい。
落語のように、というキーワードがあらゆる雑誌で事前に出ていましたが、中年カップルの会話と歌なんてまさに動きのある落語。
食い入るように見てしまいました。
歌だってそう。
たとえばダーリアやドクターなどは声を作って崩している、にもかかわらず、音程を外さない。
そしてサントラを聴いた方はわかると思うのですが、オリジナルの再現率がハンパない。
自由にやっているように見えて、実は声のニュアンス、笑う場所、些細な部分まで丁寧に作りこまれています。
YouTubeでオリジナルキャスト版を見ると驚きます。
(友人からのお勧め: https://youtu.be/lguWQhogTmY
何を言っているのかわからなくても、誰を演じているのかすぐにわかります。
それは坂本くんがしっかりオリジナルを踏襲したから。
いろんな役者さんのバージョンがありますが(ぜひYouTubeを検索してみてください)坂本くんほんとうまくてびっくりしちゃう。

ピアノだってこんなに弾けるようになっちゃったし、どれだけ技術を持っているの坂本くん。
まだまだ爪を隠していそうで怖い…

2人だけの舞台で、しかもピアノを全編2人で演奏する前代未聞のミュージカル。
雑誌の対談で坂本くんと松尾さんが言っていましたが、まさに必要最小限まで削り落とされたミュージカル。
だからこそ役者同士の持ち味や技術の対比を楽しんでもらう舞台になるだろう、と。
この言葉そのままの舞台だったと思います。

しっかり作りこんだ坂本くんに対して、松尾さんはマーカスと完全に同化していて、観ているうちにマーカスなのか松尾さんなのかどっちかわからなくなることがよくありました。
スタイルの違う2人の化学反応はマーカスとドクター、マーカスとヘンリーの「遊び」の部分でもいい味出してたなあ(笑)
終わりに向かうにつれてドクターもヘンリーもどんどん悪乗りしていったけど、最初は振り回されているマーカスも結局はいつも冷静に受け止めて最終的にはやり返す。
坂本くん主導で松尾さんを困らせているように見えて、実は松尾さんがコントロールしているんですよね。
その役割交代がとても自然で、これは息があっている証拠だなあ、と観ていて毎回思いました。
この2人だったからこんなに楽しいお芝居になったんだと、それは間違いない!

サントラを聴いてから、この作品をこの2人がやるなんて「これマジでヤバいん」な状態で、幕が開くのをずっと楽しみにしていました。
幕が開いてしまうと閉じるのはあっという間で、今まさにマーダーロス。
ふとパンフレットを開いたら、またじわじわと色々な思いが込み上げてきちゃいました。
初日までの準備やお稽古、想像できないくらい大変だっただろうなあ。
本当に素敵なお芝居を見せていただきました。
こんなに奇抜な、でも唯一無二な作品を教えてくれた坂本くんと松尾さんに感謝!

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久々に過去記事を遡ってみたら、坂本くんがらみの記事が何と多いことか。
まるで坂本担…でもそうじゃないんですよ。
ブログにまとめたくなるほど坂本くんがいい作品を選んでいいお芝居をするから悪いのです。